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  4. 帝京大学様 外部倉庫活用による開架書庫の環境改善事例

蔵書があふれ、開架書庫の通路に段ボールで本を並べる事態に。「このままでは図書館としての責務が果たせなくなる」と強い危機感をお持ちになり、開架書庫の改善に取り組んだ帝京大学メディアライブラリーセンター(MELIC)様の事例です。導入の経緯や詳しい効果について、帝京大学 学術情報グループ グループリーダー 山下 智美様(写真左)、同グループ 学術資源サービスチーム/企画・システムチーム チームリーダー 辺見 純子様(写真右)にお話を伺いました。

導入の背景

- 図書の保管について、どのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか?

本学の図書館は、利用者が資料を手に取りやすい環境を整え、蔵書の99%を開架していることを特長としていました。ですが、毎年、約12,000点を蔵書として受け入れているので、書架の狭隘化が進み、2014年に収容率が100%を超え、2019年には111%と収容可能数72万冊に対して蔵書が80万冊を超える状況になりました。特にここ数年は、社会科学分野を中心に書架に配架できない蔵書がでるフロアもあり、一部の蔵書は出納式で貸し出したり、定位置でない場所にも配架したりするなど工夫しましたが、学生、教員にとって不便な状況となっていました。

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置き台やダンボールを利用し、あふれた蔵書を館内の通路スペースに仮配架

導入のポイント

- そのような課題の解決の方法として外部保管を検討された理由は何でしょうか

課題解決にあたっては、ただスペースを確保するだけではなく、利用者から出納の要望があった際に、不便を感じさせないこと、また貴重な資料を良好な環境で保存することの2点を大前提としていました。利用者の利便性を考えると、学内でスペースを確保したとしても、書架や空調設置などへの設備投資や新たに出納業務を担当する人件費の発生は避けられません。また、時間的な猶予もあまり残されていない状況でした。最終的に、図書の保管環境や利用者の利便性を総合的に考えると、時間的にも、コスト的にも、外部保管の方にメリットがあるとの結論に至りました。

寺田倉庫を知ったきっかけは何でしょうか

図書館総合展で工学院大学さんの事例紹介を聞いた時から興味を持っていました。その後、2020年11月に寺田倉庫主催の蔵書管理勉強会と倉庫見学会に参加し、レコードセンター芝浦を見学する機会がありました。文書、映像フィルムなどの管理技術・環境が整っていること、美術品や絵画を含め非常にセンシティブな管理が必要な保管品の管理実績があることも知ることができました。

- 寺田倉庫を選んだ理由は何でしょうか

学内での意思決定過程では、適切な除籍が行われているのか、外部に預ける冊数に妥当性はあるのか、の検討とともにやはりコスト面も検討課題となりました。この点については、初期費用として生じる搬出・搬送費用、ランニングコストとなる保管費用どちらについても、こちらの条件にあった、最適な提案をいただけました。一例としては、保管費用面での提案があります。保管方法には、1冊単位での保管と箱単位での保管の選択肢が用意されていました。出納効率を重視すると、1冊単位での保管にメリットがありましたが、高度な管理が必要となるため、コストは若干高いものとなっていました。今回は、利用頻度の少ない資料を外部保管の対象としたため、出納効率よりも、コストの抑えられる箱単位での保管を選択しました。倉庫見学を通して、書籍管理のノウハウ・実績だけでなく、寺田倉庫全体の企業コンセプトや、新しい事業へのチャレンジングな姿勢に魅力を感じていましたので、最終的に協働できるパートナーとして選定できて良かったと思っています。

導入の効果

–  蔵書を外部保管したことで、どのような効果がありましたでしょうか

毎年適切な除籍を行っておりますが、新規で受け入れる冊数の方が多いので、書架の狭隘化が進みます。今回、外部保管という選択肢ができたことで、本来の学生の学習を重視した蔵書構成を維持できます。大学図書館において「学術情報の体系的な収集、蓄積、提供」、また、それを使った「授業支援」「研究者支援」は学習・研究活動において重要なミッションです。今後も、MELIC(帝京大学メディアライブラリーセンター)では学術書だけでなく、学習・学生生活・自己実現・就職に関する資料や情報を多様な媒体で提供できるよう整備し、特に授業と連結する指定図書の整備にもこれまで以上に努めたいと思っています。

- 蔵書の保管にあたり、図書館からの搬出作業も担当させていただきました。作業の品質はいかがでしたでしょうか

休館期間ではなく、開館中に搬出作業をしていただきました。図書の箱詰めは、約47,000冊にのぼり、収納した箱も4,000箱に達しましたが、現場監督の指示のもと、テキパキと動かれていたのが印象的でした。また、当初想定した以上に、搬出対象のフロアに利用者がいましたが、作業動線を工夫していただき、利用者優先で作業していただけてありがたかったです。お預けする図書の数量が多く、また、サイズ、形状が様々でしたので、当初、寺田倉庫さんで見込んでいた箱数に見込み違いが生じましたが、迅速に対応いただき、ほぼ予定通りの11日間で事故なく作業を完了いただきました。

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館内での作業では利用者の安全確保や図書・書架等の損傷を防ぐため養生作業を徹底
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バーコードを読み取りながら箱詰め
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決められた作業動線上で作業を行い、利用者への影響を最小化

今後の展望

- 外部保管導入により、出納業務など一部業務のフローが変わることになると思います。今後、どのように蔵書管理を行っていこうと考えていらっしゃいますか?

今回一部資料をお預けすることで、すべての資料に直接アクセスできる全面開架式から一部の資料は請求しないと直接手に取れなくなりました。今後も、利用者が必要とする資料へスムーズにアクセスできるよう工夫し運営することが大切だと考えています。eTRUNK(WEBからの入出庫依頼システム)には、どの箱にどの書籍を収納したかわかるように情報を登録し、必要な書籍が入っている箱をすぐに検索して特定できるようにしました。依頼してから最短翌営業日にはMELICへ取り寄せできます。まだ、コロナ禍ということもあり、本格的な運用とはなっていませんが、事前に実施いただいた操作説明会や、実際に操作してみた印象では、視覚的に操作が理解しやすく、操作面での不安は持っていません。また、eTRUNKへの登録データを別途、提供してもらい、OPAC上で、「貸出中」、「利用可」、「外部保管」のステイタス管理が出来るようにもしました。外部保管によって出納業務に影響が出ることを心配していましたが、これらの工夫によって、充分にクリアできると思っています。

- 外部保管という選択肢は、ひっ迫する蔵書スペースの確保を最優先する目的で利用いただくケースが多いのですが、中長期的な観点での利用は想定されていますか?

大学図書館は、学習・研究を推進するため、今後も必要な資料を収集・保存し、スムーズに利用できるよう環境整備を続ける責務があります。その責務を果たすためには、蔵書の保存スペース確保は、これからも考えていかなければならない課題です。また、著作権等慎重な検討を必要とする要素もありますが、資料の電子化、アーカイブ化も今後検討していきたいと考えています。所蔵している貴重書や郷土関係資料などの文献をアーカイブ化して公開したり、本学の博物館と連携したりすることで、新たな保存・展示方法の可能性も感じています。スペースを確保するという観点だけではなく、社会・地域貢献につながるような取り組みを検討していきたいと思っています。今後、寺田倉庫さんには、外部保管だけでなく、アーカイブの面でもご協力いただくことがあるかもしれません。ただ保管してもらうだけでなく、その先を見据えた取り組みへとつなげていきたいと思っています。

- 「共読ライブラリー」など新たな取り組みや、図書館総合展に出展されるなど、図書館として情報発信を積極的にされています。そのような観点で、今後、寺田倉庫に期待されていることはございますか?

「共読ライブラリー」は帝京大学で2012年から行っている全学的読書推進プロジェクトです。本を「読み合い・薦め合い・評し合う」を合言葉に、押しつけの読書ではなく、同世代の大学生同士が読書のカッコよさを伝播していくことで、「学び」の入り口になる1冊の本に出合うきっかけを仕掛けています。MELIC館内やOPAC(蔵書検索システム)には本のリコメンドがあふれ、本を介して、学生・教員・地域の方・ゲストとの多様なコミュニケーションが成立するのが魅力ですが、寺田倉庫さんの「知の共有→新しい価値の創造」というコンセプトにもつながると思っています。いろいろな企業とつながっている寺田倉庫さんと本学の学生が知の共有から新しい価値を創造するような企画を、図書館総合展などでご一緒できると面白いのではと感じています。

お客様プロフィール

名称 学校法人帝京大学
創立 1966(昭和41)年
業種 教育
学生数 21,765名(2021年5月1日現在)
ホームページ https://www.teikyo-u.ac.jp/

1931年に創立した財団法人帝京商業学校を起源とし、1966年に創設。建学の精神に掲げる人材の育成を目的・使命としており、これを達成するために「自分流」という教育理念および「実学・国際性・開放性」という具体的な教育指針を示し、学部学科等において教育目的を定めている。現在は10学部32学科10研究科(2専門職大学院)を擁する総合大学となっている。

帝京大学メディアライブラリーセンター(通称:MELIC)は、板橋、八王子、宇都宮、福岡、霞ヶ関の5つのキャンパスのうち、八王子キャンパスに位置する図書館である。地上4階、地下1階、蔵書は約81万冊(2006年9月竣工)。学力の向上と情報編集力の獲得を目的とした「共読ライブラリー」プロジェクトなどユニークな取組も行っている。

※事例に記載された学校名・部署名等の情報は取材当時のものです。閲覧時点には変更されている可能性があることをご了承ください。

取材:2021年8月

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