STATEMENTマイ・コレクション展 2019 キュレーターステートメント

増田セバスチャン（アーティスト、アートディレクター、文化庁文化交流使、横浜美術大学 客員教授、京都造形芸術大学 客員教授、ニューヨーク大学 客員研究員）

今年で第6回目を迎える寺田倉庫の「マイ・コレクション展」においてキュレーションを務めるという大変光栄な機会をいただきました。今回の展示作品は、寺田倉庫に保管されている作品の中からコンテンポラリー作品にフォーカスしています。アーティストにとって作品とは、真理に向かうための問いかけであり、世の中に放ち受け手があって初めて完成するものと考えています。その作品が生きている内に評価されないことも珍しくはありません。コンテンポラリーの作品を蒐集するということは、価値が確定していない作品や作家に価値を見出し、リスクを取りながらも信念を貫く行為ではないかと思うのです。作家は人生を投げ売って作品を生み出しますが、コレクターは私財や時に名誉を賭けて、作品をコレクションし自らを映し出す文脈の一つに加えるのです。 そうしたサイクルを経た作品は時代を映し出す鏡としての強度を増していくのではないでしょうか。 倉庫に大切に預けられている作品を展示するという、寺田倉庫のユニークな取り組み「マイ・コレクション展」。コレクションとアーティストの作品の奥にある、切っても切れない文脈と関係性に着目することで、新しい時代の切り口を見つけられるかもしれません。